• MY HOBBIES / Kenichi Hamana

1937年.第2次世界大戦の直前。世界は文化・経済ともに充実し繁栄していた時期です。国際ロータリー(RI)の年次大会はフランスのニースで6月6日から11日まで6日間にわたって開催されました。この大会には日本から30名のロータリアンが参加しています。ガーデンパーティでは手元のプログラムによれば日本舞踊の紹介もあり、その踊り手の夫君Kokichi Uyeda(上田厚吉・東京と推測)氏は欠席した第70地区(当時)里見純吉ガバナーノミニー(大阪)の代理として「日本ではロータリーを重要な倫理組織として考える・・・・・」とスピーチ(大会議事録103~104ページ)をしています。
郵趣の視点から見るとこの大会は、地元の郵趣会がタイアップしたイベントが実施された興味深い大会です。20世紀の半ばごろまで、ロータリーの国際大会のような大きなイベントでは、記念切手の発行などに合わせて地元の郵趣団体が記念の切手展や記念品の作成販売などを行い、大会行事の盛り上げに一役買うことが多かったようです。

「ニース1937」では記念切手の発行はありませんでしたが、地元郵趣会の提案でフランス郵政が粋な計らいをしてくれました。まず、当時フランスで人気の高かった「自由の女神切手」のシートの余白部分(タブ)にロータリーのロゴと大会の文字を印刷してくれたのです。オレンジ①と紫②の2色があります。しかしこれだけではシートの外周部の切手しかそのタブを使えません。そこでシート内部の一部の切手の印刷版を外して代わりにロゴと記念文字の版を差しこみ切手シートの印刷を行ったのです。最近はやりのフレーム切手の前身にPスタンプ(タブ付き切手)がありましたがその奔りといえるものです。シートのどの部分を差し替えたかの研究もされていて、ROTARY ON STAMPS(ROS)の会報のバックナンバーで知ることができます。
郵趣会は記念台紙を作り、切手とタブを並べて貼り、そこに大会の記念消印を押したスーベニアカードを作成しました。オレンジ③は200枚、紫④は500枚、それぞれシリアルナンバー入りで作られました。③と④はそれぞれのナンバー1です。記念カードができる前の校正⑤も残されています。また、切手の上にロゴを印刷してしまった「エラー」⑥もありました。私はニース1937に関して、最近入手したものも含めて、1冊の本ができるほど多くの郵趣アイテムを抱えています。ロータリー郵趣にかかわり始めたころ、ニースで3回目の国際大会があり、そこに参加したロータリアンが実は子どもの頃祖父に1937年の大会に連れて行ってもらった、という話を聞き、何となく興味を持ったからです。たまたま知り合ったROSの元会長デイビッド・ホアン博士(米国)に伺ったところ、彼の直後のROS会長ルネ・ラガード博士(フランス)を紹介してくださいました。ラガードさんは1987年のミュンヘンでの国際大会の会場に展示したニース1937のコレクションをそのままの状態で持っておられました。なんと、手紙で初めて知り合った私にその一式を「引き継がないか」と言われたのです。1998年7月のことでした。彼は40ページに上るコピーと解説を送ってくださいました。勿論ただというわけには行きません。手紙とファックスのやり取りが続き、結局引き取らせていただきました。フランスでは誰も引き受けなかったのだろうかと考え込みましたが、まあこれがご縁というものなのでしょう。翌1999年7月4日、パリで10年に一度の国際切手展があるというので出かけました。彼は足の不具合を押して、列車で4時間の距離をやってきてくださいました。その後2002年のバルセロナ大会には奥様もご一緒⑦で、会場内にロータリーの切手の展示をされていました。2006年のコペンハーゲン大会でROSのブース活動をご一緒したのが最後で、クリスマスカードのやり取りは続いていましたが、昨年訃報が入り、もっといろいろお話を伺っておけばよかったと後悔しました。彼も私も英語が苦手で、パリでの初対面の時は、彼から「イタリア人のように身振り手振りで話そう」と言われたのを今懐かしく思い出します。


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